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中小企業のための労務管理入門

能力開発管理

このページでは、法政大学大学院の藤村博之教授の講義ポイントを取り上げていきます。

テーマは「能力開発管理」です。

激変を乗り切るには考え、議論すること

・社会での、労働者の能力に対する需要は変化するため、どんなに高い能力を身につけていたとしても、稼げなくなる日が来る可能性がある。

・社会での需要の変化についていくためには、常に新しいことに挑戦し続けなければならない。

・何歳になっても人間には可能性がある。自分の中には「まだ会ったことのない自分」がいる。野村克也さんの生の講演会で聞いた話によると、プロ野球で活躍する選手というのは、どんなにスランプに陥っても、自分はまだまだやれると信じて継続して努力を続けられる人だという。どんなに能力の高い人でも、ダメだ、と言ってあきらめたらその時点で終わり。

・アメリカ型の株式市場が日本企業の経営を短期志向にしてしまい、今年の利益をどうやって出すか?ということにとらわれ、中長期的な人材育成にコストをかけなくなってきた。

・管理職に、あなたの1日の持ち時間は?と聞くと、自分自身の労働時間を答えがち。しかし、部下の労働時間も含めて、管理職自身の持ち時間と捉えることもできるはず。限られた時間で自分のやりたいことを部下とやるのが管理職だから、それはやらなくてもいい、と部下に判断を下さなくてはいけない。しかし、その役割が十分に果たされていない。

・日本企業の現状として、異常を察知する能力が低下する傾向にあるという。その結果、重大事故の発生可能性が高まっている。
労働者自身が考え、疑問を持つということをしなくなっている。それは、マニュアル化の弊害だという。「なぜ、今これをしなければならないのか」という部分が抜け落ちてしまっている。
したがって、必要なのは、業務の手順を全て示したマニュアルではなく、細かい判断を個人に委ね、大枠のみ示すガイドラインだという。

・今も昔も学生は有名企業志向。就職を選ぶ基準は、親戚の人たちに企業名を言った時、説明しなくてもいい会社で、大企業の関連会社ならOKだという。また、内定した会社を、親が、名前の知らない会社だからという理由で、直接企業に断りを入れるというケースも。

→「価値観」の多様化、というけれど、多様化しているようには見えず、今の学生は、ただ与えられたものに慣らされているだけ、のように見える。
今は、相手の心の中に踏み込んで議論することを避ける傾向にあり、「あ、君と僕の意見は違うんだね。」で会話が終わってしまうことが多いように見えるという。

・今後、日本企業は、社員の能力開発を行うにあたり、以下の3つが重要だという。

①評価の時間軸を長く取る。
 例えば、アイリスオーヤマは、採用した社員の5年後の活躍を見て、採用担当者を評価するという。中長期的に評価をする必要がある。

②長期勤続者を評価すべき。
 例えば、アメリカの企業のうち、86%に永年勤続表彰制度があるという。アメリカにはそんなのないんじゃないか、という偏見があるが。

③若者を育てる企業の社会的責任を果たすべき。
 職務で採用するジョブ型雇用と、「我が社のメンバーになってください。どんな仕事をしてもらうかは、採用後、適性を見ながら決めます」というメンバーシップ雇用という、二つの雇用形態がある。日本が、長くメンバーシップ雇用をしてきたが、そこに成果主義が導入されたことで、日本の人事制度の迷走が始まった。それは、メンバーシップ型雇用という OSの上に、ジョブ型雇用という OSで機能するアプリケーションを持ってきて動かそうとしたようなもので、結果として混乱を招いた。

・最後に江戸末期の話。
会津藩→識字率が高く、きっちりした教科書があり、皆それを覚えることに精を出した。
薩摩藩→識字率低く、教科書を読めない人が多い。その結果、皆が集まって喧々諤々の議論を重ねた。(郷中教育という)
→薩摩藩士たちは、状況に応じて考えて、考えた内容を他人にぶつけてさらに考えることを繰り返した。
→明治維新という激変を乗り切るには、薩摩藩の教育の方が、時代に合致していたという。

・結論
社内で議論し、考えて欲しい。その結果、新しい発想が生まれ、イノベーションが生まれる。

脱マニュアル化を

【講義を聴いて】

組織が拡大し、すべての従業員の業務遂行の質を引き上げるには、マニュアル化が大事なのは言うまでもありません。マニュアルなどで業務の手順を明文化することで、組織内部で容易に業務内容を共有することができ、組織としての連携が取りやすくなります。その段階に達していない中小企業は多く存在すると思います。しかし、さらに一歩進んで、自ら考え、微妙な変化を感じとり、応用できる人材の育成も必要です。マニュアル化は、逆にその足かせになってしまうということもありえます。ですから、マニュアルが必要か否か、企業の成長段階に応じて、その必要性の適切な見極めが重要だといえます。(岩﨑)